小 宇 宙 |
東洋医学とは、東洋独自の民族医学を「東洋医学」(広義)と呼びます。
これには、中国・インド・朝鮮・日本などの伝統医学が含まれますが、特に、古代中国(漢代)の医学が優れており、奈良時代には遣唐使らによって日本にも広く普及しました。
今の日本で東洋医学といえば、鍼灸(物理療法)と漢方(薬物療法)を意味していますが、東洋医学の根本は、自然哲学の思想です。
古人は自然界を「大宇宙」、人体を「小宇宙」とし、天地間の自然現象も人間の生活現象も、同一の原理によって支配される事になり、大自然の自然現象も人間の生理現象も同じものだと考えました。
例えば、春は人体の陽気(体を守り、活動力を出す気)が多くなり、心身共に伸び伸びと、活動的な気持ちになる時期です。
春の気に逆らって静かに沈んだ状態でいると病気になります。木の芽どきになると神経痛・皮膚病・だるい・のぼせる・眠れない等という人がいますが、適当に運動をして陽気を発動させると治ることが多いようです。
このように自然の現象(季節の変化など)を重視し、これに順応することが大切であると考えたのです。 |
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心身一如 |
東洋医学の最大の特徴は、精神と肉体を一体としてとらえる「心身一如(しんしんいちじょ)」という考え方にあります。
病気の起こりは外因性のものばかりでなく、内因性のものがたくさんあります。
例えば、心の不安、動揺がストレスとなり、ストレスが身体の変調を来たし、そして器質的疾患を引き起こすようなことはよく知られています。(具体的にいうと、ストレスを感じるとお腹がゆるくなったり、頭が痛くなったりする方がいらっしゃいます。)
従って、東洋医学は「身」の調整ばかりでなく、むしろ「心」の調整を図ることを重視します。
日々の診療の中で、特に感じるのが「身体がつらい」と訴えて来院される方々の中に、実は「心」が悲鳴をあげている方が沢山いらっしゃることです。
そういった方達に対して、私たちは身体の治療もしますが、「心身一如(しんしんいちじょ)」の考えのもと、できるだけお話を聞く事を大切にしています。
「心」が楽になると自然と「身」が楽になっていくのも事実です。
治療中ずっと泣いている方や、しゃべりっぱなしの方もいらっしゃいますが、お話を聞くことで「心」と「身」が楽になり、バランスがとれていくのです。
「病気を診るのではなく病人を診る。病気を治すのではなく病人を治す」
といわれるように、総合的にとらえていく東洋医学は、まさに現代に必要な医学といえると思います。 |
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治未病 |
一般にも耳にされるようになった「未病治(みびょうち)」。正確には「治(ち)未病(みびょう)」。
『未(いま)だ病(や)まざるを治(ち)す』と読みます。
未病とは、何だかスッキリしない、身体が重い、怠いなど、完全な健康体とは言えないまでも、医療機関などでは病名が付かないような状態をいいます。しかしこのような状態のまま日常生活を送っていると、いずれ病気を引き起こします。
「治未病」とは、健康でもないが病気でもない状態を病気に発展しないよう未然に防ごうとするものです。
中国最古の医学書といわれている『黄帝内経・素問』では、第二章に次の文章があります。
◆四氣調神大論篇第二.
『是故聖人不治已病、治未病、不治已亂、治未亂、此之謂也。 夫病已成而後藥之、
亂已成而後治之、譬猶渇而穿井、鬪而鑄錐、不亦晩乎。』(原文)
(この故に「道理に明るい人は、病気になってしまってから治療方法を講ずるのではなくして、
まだ病にならないうちに予防する」、というのである。国家を治めるのと同じように、騒乱が起こ
ってしまってから、これを治める方法を研究するのではなくして、騒乱の発生する前に、未然に
これを防ぐのである。仮に疾病がすでに発生してしまってから治療したり、戦乱がすでに起こっ
てしまってから平定するということであれば、つまり、口が渇いてやっと井戸を掘ることを思い
つき、戦争になってからやっと武器を造ることを考えるのと等しく、それでは、あまりにも遅すぎ
るのではなかろうか。)
急性病・慢性病にも対応する鍼灸ですが、東洋医学ではまず「治未病」が重要です。
当院では、定期的に身体のメンテナンスをされる方が多くいらっしゃいます。特に「これ」といった症状がなくても、鍼灸などで普段から定期的に身体の調整を行うことにより、病気になりにくい身体作りをし、病気になってもすぐ回復する自己免疫力を強めます。
そうすることで病気を未然に防ぐことができるのです。加えて食事、運動などの生活習慣を指導する事も含まれます。
日常に上手に東洋医学を取り入れて頂きたいものです。
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